不動産売却に影響を与える心理的瑕疵とは?売却価格の相場や告知義務を解説

青栁 伸彦

筆者 青栁 伸彦

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不動産売却に影響を与える心理的瑕疵とは?売却価格の相場や告知義務を解説

事故物件などの心理的に嫌悪感を抱くような物件は、売却時に買主へ伝える義務が生じます。
また、買主が敬遠してしまうことから、心理的瑕疵の内容によっては大幅な値下げが必要になることも少なくありません。
そこで、不動産売却における心理的瑕疵とはなにか、売却価格に与える影響や告知義務について解説します。
これから不動産売却をご検討中の方は、ぜひ参考になさってください。

不動産売却前に知っておくべき心理的瑕疵とは?

不動産売却前に知っておくべき心理的瑕疵とは?

心理的に抵抗を与えるような物件は、不動産売却で何かしら影響が出ることがあります。
たとえば、買主が見つかりにくいことや、売却価格が下がることなどが挙げられます。
ここでは、心理的瑕疵とはなにか、また告知義務についても見ていきましょう。

心理的瑕疵とは

心理的瑕疵とは、心理的に抵抗や嫌悪感を抱く物件のことです。
心理的瑕疵物件の特徴は、構造や設備上は何の問題もないにもかかわらず、住むうえで心理的に抵抗感を感じる物件のことです。
もっともイメージしやすいのが、自殺や他殺など不自然な死が発生した、いわゆる事故物件が該当します。
また、事故物件以外にも墓地や火葬場、反社会的組織など嫌悪感を抱く施設が近隣にある場合も、心理的瑕疵として認められる場合があります。
このように、心理的瑕疵がある物件は、建物自体の構造には問題がなくても、生活するうえで心理的に影響を及ぼす恐れがある物件です。
そのため、心理的瑕疵がある物件を売却する場合は、買主にその旨を伝える「告知義務」が課せられています。

不動産に関するそのほかの瑕疵について

不動産売却において、心理的瑕疵以外にも知っておくべき瑕疵がいくつかあります。
まず、建物の構造など不動産自体に不具合や欠陥がある「物理的瑕疵」です。
たとえば、シロアリ被害や雨漏り、建物の傾き、地盤沈下などが該当します。
一般的に瑕疵とイメージすると、この物理的瑕疵を思いつく方が多いのではないでしょうか。
そして、法的に問題がある「法律的瑕疵」も瑕疵の1つです。
たとえば、都市計画法や建築基準法、消防法に反しているような物件が該当します。
住宅の建設が認められていない市街化調整区域に建設されている場合や、接道義務を満たしていないような物件です。
なお、法律的瑕疵に該当する多くが、改正前の基準で建設されており、現行の法律の基準を満たせずに瑕疵となっています。
そのほかにも、環境的要因が原因で不快感や嫌悪感を抱く「環境的瑕疵」もあります。
たとえば、近隣に工場や高速道路などの騒音や振動がある場合や、工場から異臭がするような場合です。
環境的瑕疵は、実際に日常生活に影響するような瑕疵が該当しますが、内容によっては心理的瑕疵に含まれる場合もあります。

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心理的瑕疵が不動産の売却価格に与える影響

心理的瑕疵が不動産の売却価格に与える影響

心理的瑕疵がある物件は、買主に抵抗感や嫌悪感を与えてしまうため、購入を躊躇されてしまうケースも少なくありません。
そのため、少なからず売却価格にも影響を与えることがあります。
ここでは、心理的瑕疵がある不動産が通常と比べてどのくらい売却価格に影響を与えるのかを見ていきましょう。

心理的瑕疵の売却価格の相場

所有している不動産が心理的瑕疵物件に該当する場合、どのくらいの価格で売却できるのか気になる方も多いでしょう。
一般的に、いわゆる事故物件と呼ばれるケースでは、通常と比べて2~5割程度下がるといわれています。
なぜなら、事故物件のような不自然な死が発生した物件は、買主に敬遠されてしまうためです。
そのため、余程立地が良くない限りは、価格を下げて売却することになるでしょう。

売却価格は心理的瑕疵の内容によって異なる

不動産を査定する際は、立地や間取り、設備、築年数をもとに資産価値を見積もります。
事故物件では、これらの査定にくわえて心理的瑕疵の内容が重要視されます。
たとえば、売却価格が20%下がるようなケースは、高齢者が孤独死したような場合です。
孤独死は、発見までに時間がかかるケースが多いため、心理的瑕疵がある事故物件として扱われることがあります。
ただし、高齢者が寿命や病気で亡くなったような、いわゆる自然死は心理的瑕疵は少ないと判断されます。
そのため、それほど売却時に影響は出ることはなく、多くても20%下がる程度といえるでしょう。
一方で、売却価格が50%程度下がるケースは、殺人事件が発生した物件です。
殺人事件で死亡してしまうと、その物件は強い心理的瑕疵があると判断されます。
なぜなら、このような物件は、テレビやメディアで報道されたり、事故物件サイトに掲載されるためです。
そのため、買主に悪い印象を与え、相場よりも大幅に下げなければ売却が難しくなります。
ただし、居住に対して不安を感じるかどうかは、買主によってそれぞれです。
買主によっては、それほど気にならないようなケースもあり、売却価格を大幅に下げなくても売却できることもあります。
そのため、心理的瑕疵物件の売却価格の相場は、2~5割程度低下と振り幅が大きくなります。

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心理的瑕疵がある不動産を売却するときに発生する告知義務とは?

心理的瑕疵がある不動産を売却するときに発生する告知義務とは?

心理的瑕疵がある物件を売却する場合は、買主にその旨を伝える「告知義務」が課せられています。
しかし、人の死にかかわるすべてにおいて告知が必要というわけではありません。
ここでは、告知義務の判断基準や、告知義務違反した場合はどうなるのかを解説します。

告知義務とは

告知義務とは、心理的瑕疵など不動産に瑕疵がある場合に、買主に物件の瑕疵について伝える義務のことです。
心理的瑕疵の場合、自殺や他殺といった事件性のある不自然な死が対象となります。
一方で、病死や老衰は自然死となるため、原則として告知義務の対象ではありません。
告知が必要なケース、不要なケースをまとめると、以下のようになります。
告知が必要なケース
告知が必要なケースは、他殺(殺人)・自殺・事故死・孤独死・原因が明らかでない死が該当します。
また、長期間にわたって放置されたような自然死や事故死も事故物件に含まれるため、告知が必要です。
告知が不要なケース
告知が不要なケースは、老衰や病死といった自然死、転落事故や転倒事故、食事中の誤嚥など不慮の事故です。
つまり、事件性がある不自然な死は買主に伝える必要があり、日常生活の事故死や病死は伝える義務はないということです。
ただし、自然死の場合でも、周知性や社会に与えた影響が大きい場合は、告知義務の対象となる場合があります。

告知義務はいつまで必要?

告知義務はいつまで続くのでしょうか。
告知義務の期間については、明確にいつまでと定められていません。
しかし、発生からの経過年数を目安に、売買であれば6年程度経過するまでと考えられています。
また、発生からの入居者が変わった場合や転売した場合は、告知義務はなくなるとされています。
ただし、心理的瑕疵の内容によっては、経過年数に関係なく告知したほうが良いケースもあるため、個別の判断が必要です。
なお、告知義務があるにもかかわらず違反した場合は、買主から損害賠償や契約解除を請求される可能性があるため注意しましょう。

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まとめ

心理的瑕疵とは、建物の構造上問題がないにもかかわらず、心理的に抵抗を抱く物件のことで、いわゆる事故物件が該当します。
心理的瑕疵がある物件は、買主から敬遠されることが多いため、通常よりも売却価格が2~5割程度低くなることが多いでしょう。
また、不動産売却時には買主への告知義務が生じ、それを怠ると損害賠償を請求されたり契約解除されたりするため、隠さずに適切に伝えることが大切です。